歯もしくは歯科医の神として「アポロニア」と呼ばれる女神がいるという。そこでギリシア神話の文献いろいろを調べたが一向にその姿がわからない。アポロニウスまたはアポロニオスというのはいるが、これは男性で古代ギリシアの数学者。ゼウスの子アポロンは双子で、その片方が妹のアルテミスまたはダイアナ。「アポロニア」と関連があるのかもしれない。しかしこの神は樹木の女神であり、野獣・家畜の保護神、誕生、多産、子供の守護神で、歯との関連少ないよううだ。一体歯の神「アポロニア」はどんな姿をしているのであろうか。またいつの頃から神として現れたのであろうか。そんな疑問を持ちながら、今年の4月ルーブル美術館を訪れた。とりわけミケランジェロの「奴隷」を見るためであったが、「アポロニア」は頭から離れていなかった。
学校では教育の柱として「知・情・意」が謳われる。香川県歯科技術専門学校も学校なのだから「アポロニア」に囚われず、知・情・意を主題に、との示唆を頂き、急遽三体の群像に変更。ルーブルで見た沢山の三美神の彫刻が参考となって、構想は膨らんだ。
三美神はヴィーナスの従者として表される場合が多いが、ゼウスの娘たちともいわれ、神話では脇役としての存在である。しかしその脇役たちは、美や愛や貞節の擬人化された一組として独立し、古代から近代まで盛んに絵画や彫刻で表されている。今回は「知・情・意」を示す三美神として造ろう。そうすれば本体のアポロニアを作らずしてアポロニアを示すことが出来る。
古典的な三美神の様式では、「知・情・意」は三人とも正面を向かせた。また、歯科の技術を学ぶすべての学生を迎かえ入れるよう、像の配置や構成、台座の背景のデザインなど、広がりを感じさせるような構成とした。そしてその背後の森に、見えない「アポロニア」が入ってくる人々を温かく包み込んでくれるのだと想像していただければ、作者は嬉しい。 |